夫婦の会話がすれ違うのは、気持ちの伝え方が違うから

「別に」「どっちでもいいよ」「好きにすれば」。夫婦の会話で、こうした言葉が増えてくることがあります。大きなけんかをしているわけではないのに、話しかけても手応えがない。こちらの話が流されているようで、少し寂しくなる。けれど、その返事の裏側にあるものは、無関心とは限りません。

長く一緒に暮らしていると、相手の考え方や反応を予測するようになります。その結果、言葉を省きすぎたり、反対に「わかっているはず」と期待しすぎたりする。夫婦の会話がかみ合わないとき、問題は話題そのものより、気持ちを表す方法の違いにあるのかもしれません。

同じ出来事でも、受け取り方は違う

たとえば、週末の予定を決める場面。妻が「今度の土曜日、どうする?」と聞いたとします。夫は予定を確認するつもりで「どっちでもいい」と答える。一方で妻は、「一緒に過ごしたいと思っているのは私だけなのかな」と感じるかもしれません。

夫からすると、相手に選択肢を委ねたつもりでも、妻には関心を持ってもらえなかったように聞こえる。逆のケースもあります。夫が仕事の失敗を話したとき、妻がすぐに解決策を提案する。妻は助けたいだけでも、夫には「説教された」と感じられることがあります。

言葉の意味は同じでも、そこに込めた意図と受け取った印象がずれる。夫婦の間では、この小さなずれが何度も積み重なります。

会話には「報告」と「共感」がある

大人の会話には、少なくとも二つの目的があります。予定や家計を確認するような「報告」と、気持ちをわかってほしい「共感」です。ところが、話す側と聞く側で目的が違うと、会話は簡単にすれ違います。

「今日は疲れた」と言われたとき、相手が求めているのは「早く寝たら」という助言ではなく、「それは大変だったね」という一言かもしれません。反対に、ただ聞いてほしいのではなく、具体的な手を貸してほしい場合もあります。

毎回、相手の真意を正確に見抜く必要はありません。ただ、「今の話は、聞いてほしい話? それとも一緒に考える話?」と確認するだけで、余計な衝突を減らせることがあります。少し事務的に聞こえても、長年の関係では案外役に立つ質問です。

言い方を変えると、相手の返事も変わる

不満を伝えるときも、主語を「あなた」にするか「私は」にするかで印象が変わります。「あなたはいつも話を聞かない」と言われると、相手は反論したくなります。「途中でスマートフォンを見られると、話を続けにくくなる」と言えば、問題が行動として伝わります。

また、何年も前の不満を一度に並べるより、「今日のこの場面」に絞ったほうが話し合いやすいものです。過去の採点を始めると、会話は解決ではなく勝ち負けになってしまいます。

完璧に穏やかな言葉を選べなくてもかまいません。「今の返事は少し寂しかった」と、その場に近い気持ちを伝えるだけでも、相手が状況を理解するきっかけになります。

会話が続かない日にも意味はある

夫婦だからといって、毎日深い話をしなければならないわけではありません。夕食の献立、駅で見かけた人、見逃したテレビ番組。そんな取り留めのない話が、関係をつないでいることもあります。

逆に、何かを話し合おうとしても、その日は疲れすぎていることもあるでしょう。そこで無理に結論を出さず、「今日はうまく話せないから、週末に続きたい」と区切るのも一つの方法です。沈黙をすぐに関係の悪化と決めつけず、会話の続きを置いておく。

長く一緒にいる相手ほど、言わなくてもわかる部分が増えます。その一方で、言わなければ伝わらない部分も残ります。夫婦の会話は、気持ちを一度で分かり合うためというより、ずれたままになった部分を、ときどき言葉にして確かめる作業なのかもしれません。

報告する

関連記事一覧

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。